多彩なプロジェクトを横断する設計の守備範囲
リテール店舗やショールーム、展示会ブース、ポップアップストアにイベント会場——studiodadaが手がける空間は業種も規模もばらばらで、それがそのまま引き出しの多さを物語っている。小規模なブースであっても大型の商業施設であっても、目的とスケールに合わせてチームの編成ごと切り替える柔軟さがある。求められるトーンが毎回異なるからこそ、過去案件のテンプレートをそのまま転用するような進め方はしていない。プロジェクトごとに一からコンセプトを立ち上げるフローが、仕上がりのばらつきを防いでいる。
個人的には、期間限定のポップアップ案件に対するスピード感が印象的だった。数日間しか存在しない空間に対しても設計密度を落とさず、短い会期で来場者の記憶に残る演出を組み立てている。会期終了後にSNS上での反応を計測し、次回施策のデータとして蓄積するケースもあるという。こうした「つくって終わり」にしない姿勢が、リピート依頼の多さにつながっているようだ。
クライアントの世界観を空間へ翻訳する手法
studiodadaの設計工程は、ブランドが内側に抱えているビジョンを徹底的にヒアリングするところから動き出す。素材の手触り、照明の色温度、動線の長さといった物理的な要素をすべてブランドの言語として再解釈し、来訪者が無意識に受け取るメッセージへ変換していく。色彩計画ひとつ取っても、コーポレートカラーの単純な引用ではなく、空間全体の中でどう機能するかを検証したうえで配色を決定する。こうした粒度の細かい判断の積み重ねが、完成した空間のトーンを決めている。
市場分析やターゲットの行動傾向を事前にリサーチし、どの地点で立ち止まり、何に触れ、どこで写真を撮るかまでシミュレーションするプロセスを踏んでいる。「空間に入った瞬間の3秒で印象が決まる」という声がクライアント側から出ることも多く、導入部分の設計には特に時間を割く傾向がある。コンセプト段階から竣工まで対話を重ねることで、完成後に「思っていたものと違う」というギャップが生まれにくい。初回の提案で方向性がほぼ固まるケースも珍しくないらしい。
長く機能し続ける空間をつくる設計思想
流行のサイクルが速い業界の中で、studiodadaは短期的なトレンドに依存しないデザインを志向している。普遍的な造形原理と現代の感覚を掛け合わせたアプローチで、数年後に古びない空間を目指す。持続可能な素材の採用や環境負荷の低減にも意識を向けており、設計段階から廃棄物の削減を前提とした仕様検討を行う。見た目の完成度だけでなく、運用コストやメンテナンス性まで含めた設計判断をしている点が、単なるビジュアル重視の事務所とは異なる。
完成後も運用データや来場者の反応を定期的に分析し、空間の改善提案を続けるサポート体制を敷いている。照明の調光パターンや什器レイアウトの微調整など、実際に使われてから見えてくる課題に対応するフェーズまで設計業務の一部と位置づけている。「納品後に連絡が途切れない」という点を評価する声が取引先から目立つ。運用段階でのフィードバックが次のプロジェクトの精度をさらに上げるという循環が、studiodadaの中に根づいている。
戦略的視点とクリエイティブを同居させるチーム
studiodadaでは、デザイナーだけでなくマーケティングの知見を持つスタッフが初期段階からプロジェクトに参加する。空間の美しさと事業成果を両立させるために、ブランド認知の向上や顧客獲得といったKPIを設計要件に組み込むのが通常の進め方になっている。クリエイティブの自由度を確保しながらも、投資に対するリターンを意識した設計判断が随所に入る。感覚だけに頼らず数字で裏づけを取るスタンスが、経営層からの信頼獲得につながっているようだ。
あるリテール案件では、来店動線の再設計によって滞在時間が従来比で伸び、売上指標に好影響が出たという事例がある。こうした成果がクライアント社内で共有されると、次のプロジェクトでも声がかかるケースが多い。デザインの話だけでなくビジネス戦略の相談が持ち込まれることもあり、設計会社の枠を超えた関わり方が生まれつつある。打ち合わせの場で数字とスケッチが同時にテーブルに並ぶ光景は、studiodadaらしいと感じる場面のひとつだ。


