築45年と築50年、二つの古民家が担う役割
杉並区と北杜市、都市と自然というまったく異なる環境に一棟ずつ構えている点が、シェアスペースIGUSAの運営を語るうえで欠かせない前提になる。杉並区の物件は築45年、北杜市のロッジ明野は築50年で、どちらも年季の入った内装をあえてそのまま活かしている。専用寝室でプライバシーを確保しながら、キッチンやリビングといった共用部では宿泊者同士が顔を合わせる構造を採用。家主が同じ建物に暮らしているため、鍵の受け渡しや設備トラブルへの対応も即時に行われている。
個人的には、古い建材がそのまま残された室内の空気感が印象的だった。短期の旅行利用だけでなく、数週間単位の長期滞在にも対応しており、仕事や療養など目的を問わず受け入れている。料金体系や滞在条件は期間に応じて相談できる仕組みで、リピーターが一定数いるという話も聞く。滞在の長さによって過ごし方が変わる分、画一的なホテルとは異なる時間の流れが生まれやすい。
下井草駅徒歩3分と須玉IC6分のアクセス条件
杉並区井草の物件は、西武新宿線下井草駅から徒歩3分という立地にある。駅前にはスーパーやコンビニ、飲食店が並ぶ商店街が広がっており、滞在中の買い出しや食事で困る場面はほぼない。住宅街特有の静けさが保たれたまま都心各所への電車移動がしやすいため、観光拠点としてもビジネス利用としても使い勝手がよい。東京に不慣れなゲストでも、駅近であれば到着時の不安はかなり軽減される。
ロッジ明野のほうは、中央自動車道須玉インターから車で約6分。公共交通を使う場合でも最寄りバス停まで徒歩2分と、山間部にしてはかなりアクセスしやすい条件が揃っている。標高の高い立地から南アルプスの山並みを一望でき、夏場は平地との気温差がはっきり体感できるという声が目立つ。車を持たない旅行者にも選択肢として成立する点は、地方の宿泊施設としては珍しい。
「ジャパニーズイングリッシュ」で通じ合う接客の現場
外国語が堪能なホストを想像して訪れると、少し意外に感じるかもしれない。シェアスペースIGUSAの家主は自身の英語力を「ジャパニーズイングリッシュ」と表現しており、完璧な語学力ではなく相手を理解しようとする姿勢そのもので接客を成り立たせている。言葉が足りない場面ではジェスチャーや筆談、翻訳アプリなどあらゆる手段を動員し、国籍や母語の違いを壁にしない空気をつくり出す。共用スペースでの食事や雑談が自然と多言語・多文化の交差点になっている。
異なる職業や年齢のゲストが同じテーブルを囲む夕食の時間は、初対面同士でも会話が弾みやすいと利用者から評判を得ている。旅先で偶然居合わせた人との雑談から仕事のヒントをもらった、という体験談も聞こえてくる。人付き合いに正解はないという家主のスタンスが、過度な気遣いや緊張感を取り除いているようだ。宿泊者側にも「構えなくていい」という空気が伝播しやすい環境が、結果的にリピーターの多さにつながっている。
北杜市の高原で季節ごとに変わる滞在風景
ロッジ明野を訪れるタイミングによって、まるで別の宿に泊まったかのような印象を受ける。春は新緑、夏は高原特有の涼風、秋は紅葉、冬は雪景色と、窓の外の景色が数ヶ月で一変する。鳥の声や風の音しか聞こえない朝の静けさは、都市部での生活が長い人ほど強く感じるらしい。季節を変えて再訪するゲストが一定数存在する理由は、この変化の幅にある。
夏のリピーターからは「エアコンなしで眠れる夜が贅沢」という感想が寄せられている。冬場は周囲の山々が雪化粧し、暖房の効いた室内から眺める景色がまた格別だと語る利用者もいる。日帰り温泉施設や農産物の直売所が車圏内に点在しており、連泊するほど周辺の楽しみ方が広がっていく構造になっている。


